山の棲家③

GREEN SPACE

庭をつくるということ

2016.10.21

企業

近鉄信貴線の信貴山口駅から北西へ歩いて約15分。「庭をつくる会社」グリーンスペースさんを訪問しました。

 

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緑に囲まれた素敵な空間です

 

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お話いただいた辰巳兄弟 右が兄の耕造さん、左が弟の二朗さん

 

今の仕事をはじめたきっかけは

「ここ中高安地域は昔から造園業が盛んで、祖父→父親→僕たちと代々、造園業をしてきました。仕事を継ぐとか意識もせず、家の手伝いとしてやってきて、今も、その延長線上な感じがします。他にどんな仕事があって、何を選ぼうとか考えたことも無く、自然の流れでした。」

 

造園業と庭づくり

「一般の人がイメージする造園業って、いわゆる家の庭を造るというものだと思います。でも、現実はハウスメーカーの外構工事があったりと、業界ではそれが主流です。僕たちも仕事を始めた若いころは、生活のためにそういう仕事をしていました。本当は『庭づくり』をやりたいけど思うようにできないフラストレーションもあり。でも、30代になった頃、外構工事自体が下火になってきたこともあり、思い切って「庭づくり」一本でやると決めました。一つ一つの庭を手間ひまかけて、丁寧につくっていく内に依頼が増え、自分たちがやりたかったことが実現していくようになってきました」

 

庭づくりの楽しさ

「『依頼→打合せ→プランニング→材料調達→庭造り→完成した庭の手入れ、管理』と、初めから終わりまで、自分たちが現場でこれに関われるとこが面白く、そこにこだわりを持っています。庭づくりは終わりがわからない。ずっと手入れをしていく中で変化させていくし、成長もしていく。枯れるときもあるし、思っているより伸びたりすることもあります。これって植物という自然と仕事をするから味わえることだし、そこが楽しい部分でもあります。」

 

尼崎の庭

※©「尼崎の庭」by GREEN SPACE

 

今の仕事は

「個人住宅が7割、店舗が3割っていう感じです。生活の背景になるような個人住宅などちっさな庭の仕事が好きですね。でも、個人住宅で庭をつくりたいっていう人も少なくなってきたり、予算が合わないとか難しい面もあります。最近は店舗の仕事も増えてきて、この前も南青山と心斎橋のアパレルショップの庭づくりをしました。でも、世間でおしゃれとか格好いいと言われているお店に観葉植物があっても庭がないのは、結局、庭師がそこに合う庭を造れないから。畳一畳分のスペースがあれば5,6メートルの木だって植えることができる。それを落葉樹にすると春夏秋冬を感じられるけど、そのスペースさえもらえていないのは自分たちの努力不足です。僕らも、そこに呼ばれるようになりたいって思いますね。」

 

H_BEAUTY&YOUTH(南青山)

※©「H_BEAUTY&YOUTH(南青山)」by GREEN SPACE

 

個人が庭を持つということ

「個人の庭に対する考え方も変わってきたと思います。昔はお金持ちの象徴?広い敷地に端から端までビシッときれいに造られたイメージでした。その完成した状態をいかにキープするかが大切でした。でも、今は植物の成長を見ることができたり、収穫ができたり、変化を楽しむというように、ある程度ざっくりでいいみたいなおおらかさがあります。庭だけを考えるのではなく、こういうソファがあって、ここに照明を置いてみたいに、インテリアの一部として庭があるような感じです。だから、僕たちもそういう知識が必要で、部屋から庭がどのように見えるとか、家に対してどうかとかを考えて、トータルでかっこいいものを提案しています。」

 

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※©「八尾久宝寺の庭」by GREEN SPACE

 

浜寺公園の家 一級建築士事務所エヌアールエム 写真:冨田英次

※©「浜寺公園の家 一級建築士事務所エヌアールエム 写真:冨田英次」by GREEN SPACE

 

伝えるのも仕事

「最近は、庭づくりの仕事について、色々話をする機会を頂くようになりました。世間では、庭の仕事をしている人っているんだぐらいの認識なので、誰かが伝えないといけないという意識はあって、僕らにそういうチャンスがあれば出ていきたいと思っています。伝えていく中で、全然知らない人が、僕らがしている小さなコト、しょうもないと思っていることを面白いと言ってくれることに気づいてから、その意識はより強くなりました。その面白さを伝えたい、古庭園ではなく普通の庭の面白さやリテラシーを上げていき、一般の人にも、もっと庭に興味を持ってもらいたい。そうすることで、興味がある人が庭を造りたいと思ったとき、僕らに相談しに来てもらえればいいわけで。そんなインフラを作っていくのも役目だと思います。」

 

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庭をつくるということ

 「庭を持つと基本は大変です。お金もかかるし、手入れも大変。僕らは、そういうマイナス面もきちんと話します。でも、例えば気持ちが沈んでいるとき、庭を見れば晴れるというわけではないけど、あるのと無いのでは違うと思う。昔のように、いい車に乗っているのが幸せの象徴みたいな時代が変わってきて、じゃあ、それに代わるものは?ってなったとき、それが庭であったり、庭が家庭の幸せをあらわすもの、そんな世の中になればいいなと思っています。

 

山の棲家①

※©「山の棲家①」by GREEN SPACE

 

 「もしも植木屋がじぶんの庭をつくったら。(http://green-space.jugem.jp/?eid=1143)」というブログも書いているので、庭を通して見える風景や、庭があればこういうことができる、の参考にしてもらえれば。」

 

山の棲家③

※©「山の棲家②」by GREEN SPACE

 

 辰巳兄弟の話を聞いて、庭への認識が変わりました。今までは、広い敷地が必要で、「庭=お金持ち」みたいなイメージでしたが、そんなに敷居の高いものではなく、もっとカジュアルに考えていいんだと。緑が増えるとCO2の排出量が削減され地球環境に優しいのはご存じの通り。そんなイメージが広がり、まちの中に庭(=緑)が増えると、地球だけでなくヒトにも優しい環境になりますね。

庭って、個人にとって一番身近な自然だと思います。自分の好きなように小さな自然を作り、土いじりをして、植物や鳥、虫に触れるなどの日々の手入れの中で自然を感じることができます。それを体験することで庭以外の自然を大切にしたり、生活の中で無駄を省くようになったりと。庭との関係性の中で、そういう気づきを得ることが大切なのかもしれないと思いました。ヒトと庭、そんな関係性が築けたら、きっとすばらしい世の中になりますね。

 

山の棲家②

※©「山の棲家③」by GREEN SPACE