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未来のカーボンニュートラル生活
~八尾の新しい暮らし~
「ピー、ピー、朝ですよ。ピー、ピー、起きてください。会社に遅れますよ。」
サポートロボットの呼びかけに合わせて、窓ガラスが透明に変わり、朝日が差し込んできた。外は霜が降りているようだが、断熱性能が高いので部屋は寒さを感じない。今朝も暖房をつける必要はなさそうだ。
最近曇りの日が続いたので、蓄電池の電気が足りるか少し心配だったが、日がのぼるにつれて太陽光発電量も順調に増えている。電気が不足しても和歌山県の水力発電の電気を使う契約にはなっているが、やはり自分の家で電気をつくるほうが気持ちがいい。今日は大阪市内に向けてだいぶ電気を売ることもできそうだ。
高安山の山麓にも景観・生態系配慮型の太陽光発電設備が設置され、八尾市内で使う電気の大部分を供給できると聞いている。よく見ないと設置されていることすらわからない。昔も今も高安山は八尾の宝だ。
今日の朝食は、パンと大豆ミートとサラダ。香川県産の小麦と、八尾でとれた大豆と野菜でつくられている。海外からの輸送エネルギー分も負担するなんて、昔の人はなんて無駄なことをしていたのだろう。こっちのほうが新鮮なのに。
テレビはない。私にとって大切なニュースや情報は手短にまとめてスピーカーから流れてくるし、気になった話題があれば目の前にスクリーンを出して表示させることもできる。紙を大量に使っていた新聞も広告もなく、とても落ち着いた朝を過ごせるのが好きだ。必要なら、その時にスクリーンに呼び出せばいいだけだ。
余計な物がないから掃除も楽だ。大切な思い出の品は、棚の上に飾ってあるが、掃除ロボットがその場所は丁寧に掃除をしてくれる。無駄なうなり音をあげる昔の掃除機よりはるかに省エネだ。
さてのんびりしていると、会社に遅れてしまう。今日は外が寒いので、リサイクル羽毛ウェアを着て、アシスト自転車で会社に向かう。薄型太陽光パネルの屋根付き自転車専用道で、雨の日も気にすることはない。お得意先回りも、大きな荷物を配達するのでない限り自転車のほうがはるかに便利だ。車道を走る電気自動車・電気トラックも安全自動運転してくれるので、安心して走れる。ビデオ会議室を使えば移動する必要すらないけれど、まあ少しは気晴らしも大切だと感じる。
会社も遅くまで働くことはなく、夕暮れ前に家にたどりついた。ドアをあけると自然と玄関が明るくなる。昔は壁にスイッチがあったらしいが、いまは人がいるところだけ自動的に明るくしてくれるので消し忘れもない。今日は晴れだったせいか家がよく暖まっており、自転車で帰ってきて扉をあけたときは、少し汗ばむほどだった。
まだ外が明るいうちに家庭菜園の様子を確認。大根が立派に育っており今日の夕飯に使おうと思う。やはり鍋がいいかな。自動調理にセットしたあとは、太陽熱で沸いている風呂に入るとしよう。
夜は楽しみがいっぱいだ。手作りの木工インテリアを作ったり、それをオンラインで見せ合ったり、時には木製棚の部品の修理を頼まれたりもする。私は木工は得意だが、裁縫は苦手なので得意な人に頼んでいる。気楽に頼めるのもいいところだし、逆に自分の木工の趣味も役に立っているようでうれしい。ほかにも360度映像スクリーンで映画を観たり、菜園自慢をしたり、そんな仲間とオンラインで話をしたりしたいのだが、なかなか時間もとれない。困ったものだ。
生活のための家電製品もたくさんあるが、30年前とくらべて極端に効率が向上しており、必要な電力は家の太陽光発電で十分まかなえる量になっている。昔の人の中は「カーボンニュートラルの生活って昔の不便な暮らしに戻るの?」なんて言っていた人もいたようだけれど、やっぱり生活してみないとわからないかな。
そういえば明日は休日で友達と自転車ツアーをする約束をしていたんだ、早く寝ないと。でも楽しみで眠れないな。
実用化されているもの
- 1.「窓ガラスが透明に」 技術はありオフィスの目隠しなどに実用化されています。家庭用の製品はまだなさそうです。
- 2.「断熱性能が高い」 高断熱の住宅が実用化されています。太陽光発電を含めてエネルギー消費を実質ゼロにできるZEH(ゼッチ)も一般的になっています。(参考:大阪府 https://www.pref.osaka.lg.jp/eneseisaku/sec/zeh.html)
- 3.「蓄電池」 太陽光発電の昼間の電気を蓄電し、夜に使うこともできます。災害時にも活躍します。
- 4.「太陽光発電」 屋根に設置することで、家庭の電気の多くをまかなうことができます。FIT制度により余った電気は販売することもできます。家庭の環境負荷を大きく減らすことができます。
- 5.「水力発電の電気を使う契約」 電力小売自由化で発電を選べるようになっています。
- 6.「大豆ミート」 栄養素のたんぱく質を食べる方法として、大豆など植物性タンパク質が注目されています。家畜だと大豆や穀類を餌とするため、多くの農地が必要となり、環境への負荷も大きくなります。大豆でお肉のような食感をつくっているのが大豆ミートです。(参考:消費者庁 https://www.caa.go.jp/notice/other/plant_based/)
- 7.「海外からの輸送エネルギー」 フードマイレージという指標で計算されています。商品には産地表示がされていますので参考にしてください。(参考:農水省 https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h22_h/trend/part1/topics/t3_01.html)
- 8.「リサイクル羽毛ウェア」 羽毛製品を回収して新たな製品をつくる仕組みがあります。リサイクルされた羽毛で作られた製品も販売されています。
- 9.「遅くまで働くことはなく」 働きすぎが見直され、ワークライフバランスが大切になってきています。健康のためにも大切です。
- 10.「自動的に明るく」 センサー式照明は広く使われています。人がいない場所を照らす必要がないため、省エネになります。
- 11.「家庭菜園」 プランター程度で野菜を育てる楽しみを味わうことができます。食品廃棄物もコンポストにすると、いい肥料として菜園で利用することができます。
- 12.「太陽熱」 太陽熱温水器は20世紀から実用化されていますが、近年のものは真空断熱など性能もよくなっています。
今後期待される技術
- 1.「景観・生態系配慮型の太陽光発電設備」 山を開発して太陽光パネルが設置されると、自然破壊の象徴のように感じてしまいます。太陽光パネルの形状や色彩、生物との調和など考えた設置方法を考えることは重要です。
- 2.「目の前にスクリーンを出して表示」 ゴーグルをはめたり、専用のメガネなどはありますが、普段の生活で使うためにはもう少し時間がかかりそうです。
- 3.「掃除ロボット」 床の掃除をするロボットは実用化されています。大切な棚のものをやさしく扱うことができたら、生活の他の場面でも活躍してくれそうです。
- 4.「薄型太陽光パネルの屋根付き自転車専用道」 薄型太陽光パネルの屋根も、自転車専用道も個別には実用化されていますが、セットなったものはまだ見かけません。
- 5.「修理を頼まれ」 循環経済(サーキュラーエコノミー)では修理したり、シェアしあうことでより豊かになることが視野に入っています。修理という技術をシェアすることも、社会に大きく役立ちます。修理(リペア:repair)を、4R(リフューズ、リデュース、リユース、リサイクル)に加えて、5Rという言い方がされる場合もあります。
- 6.「360度映像スクリーン」 部屋全体を真っ白なスクリーンで囲まなくても、そのように見ることができるメガネなどを使えるとすごいですね。