安中新田会所跡 旧植田家住宅

旧家で考える暮らしと環境

2016.11.12

団体

JR大和路線 八尾駅から南東へ3分ほど歩くと、風情たっぷり白壁と木造の建物が見えてきます。今回はここ、八尾市指定文化財の「安中新田会所跡 旧植田家住宅」を訪問してきました。旧植田家住宅は、旧大和川主流である長瀬川左岸(旧大和川の左岸)にあり、宝永元年(1704)の大和川付替えによって開発された「安中新田」の会所(屋敷)の地を継承したものです。昭和60年代まで、実際に植田家が住宅として利用していて、そのなごりが今も見られ、文化的にも歴史的にも大変貴重な建物です。

 

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お話して頂いた安藤さん(左端)とスタッフの皆さま

 

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きれいに手入れされたお庭

 

平成21年に文化財施設として公開。歴史や文化を後世に伝えていく役割もあるけど、ただそれだけでは寂しいので、周辺環境も巻き込んで様々な取り組みをされてきました。遠方から訪れる人もいれば、近所の子どもたちの放課後の学びの場になっていたり、一般的な文化財のイメージとは異なる、地域に溶け込んだコミュニティになっています。

今回訪問したときは「冷やし旧家はじめました」というイベントを実施していました。昔の暮らしにはエコな工夫がたくさんあります。

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これは簾戸(すど)というもの。見るだけで涼しくなりますね

 

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井戸水を使った足水。夏場でも18℃ぐらいで冷たく気持ちいい。足水をしながらのラムネは格別!

 

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今では使わなくなった蚊帳も体験

 

現代のようにエアコンで体感的に涼しくなるのではなく、見て感じて五感で涼しくなる工夫がされていました。この空間にいるだけで涼しく感じられ、近くに住んでいたなら、毎日でも来てみたい空間です。皆さんは「クールシェア」という言葉をご存知ですか?エアコンの温度を28℃に設定するクールビズよりさらに一歩踏み込み、涼しい公共空間などに出かけて、皆で涼しさを共有する、それにより個人宅でエアコンを使用せずに節電するという取り組みです。ここ旧植田家住宅は、暮らしの工夫を勉強しながら涼も味わえる最適の空間ですね。

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昔ながらのかまど。これでお米を炊いて、餅つきイベントもしているそうです

 

建物自体にもエコな工夫がされています。このご飯を炊くかまどから出た煙は、天井の穴を抜けて2階に昇っていきます。その先は、薪置き場になっていて、煙に燻され良く乾燥したら火が付きやすくなる。その薪でご飯を炊く。使用している薪も、わざわざ準備したものではなく、地域の方から廃材をもらったり、庭の剪定で出たものを使うなど、すごく利にかなった仕組みですよね。

現代では、何かをするために、それに適した道具がある。もちろん便利ですが、それが電化製品であれば、その都度エネルギーを使うわけですよね?他にも昔の道具として、割れた皿を修理したものが展示されていました。その頃は当たり前のようにリユースの考え方が浸透していて、本当に使えなくなるまでモノを大切にしていた様子が見えました。

対外的にもいろいろな取り組みをされています。例えば、地域の小学校で出前授業を行ったり、八尾市にある他の3つの文化財施設と連携しながらエコミュージアムの形成にも取り組んでいます。何ごとも旧植田家住宅の中で終わらせるのではなく、周囲の地域とともに歩んでいくことの大切さ、そこへのこだわりが感じられました。

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情報満載の季刊紙「旧植田家だより」。市役所や出張所などで入手できますよ

 

安藤さんの話の中で、とくに印象に残っているのが、

「色々な取り組みをしているけど、とくに環境を意識しているものはないです。環境って、暮らしや生活そのものですよね。」

というフレーズです。

 

今は、環境に優しいことをするために、わざわざ考え行動する必要がある。でも、昔は、暮らしや生活スタイルそのものが自然と環境に配慮されたものになっていたのだと思いました。便利さを追求するあまり何か大切なことを忘れている気がする。そんなことをふと思い出させてくれる素敵な場所でした。